研修医・医学生へ

教授のあいさつ

1983年4月福井医科大学に泌尿器科学講座が開設され、河田幸道先生が初代教授となり、同年10月の附属病院の開院にともない、本格的な泌尿器科学講座としての活動を開始されました。その後、第2代の主任教授である岡田謙一郎先生が、1988年2月から2001年3月までの13年間、教室を運営されました。2002年5月に第3代の主任教授である横山修先生が就任され、2003年10月の大学統合に伴い、福井大学医学部器官制御医学泌尿器科学講座として新たにスタートしました。2022年3月までの20年間にわたる教室運営の中で、診療、研究、教育それぞれの面で様々な改革を遂行され、教室は大いに発展しました。そして2022年4月に、私(寺田直樹)が第4代の主任教授として就任させて頂くこととなりました。2024年4月時点で、講師2名、助教5名(内1名は大学院生)、医員(大学院生)3名、専攻医4名、計15名の医療スタッフが在籍し、診療・研究・教育に取り組んでいます。同門会々員数は約70名であり、関連施設や医院などで勤務され、福井県並びにその周辺地域の医療を支えています。

現在福井大学では、腎、膀胱、前立腺などの尿路性器がんに対する診療に加えて、尿路結石、前立腺肥大症、腎移植、小児疾患、女性泌尿器疾患、男性不妊症など、様々な疾患に対する手術が幅広く行っています。特に、腹腔鏡手術に加えて、早くからロボット手術を導入し、患者への負担の少ない治療を目指しています。今後は、県内の関連施設と連携し、データベースやオンラインを駆使した治療の適応や手技の均一化を行い、各疾患に対する治療の集約化を図っていきたいと考えています。そうすることで、大学病院としての役割である新規医療技術の導入や開発などを積極的に行うことが可能となり、福井県全体としての診療レベルの向上に繋がると共に、医師教育の面でもプラスとなると考えています。また、現在、尿路性器がんに対する薬物治療に関して、様々な新規薬剤やがんゲノム医療が開発されつつあります。これらは、今後さらに複雑化し、高い専門性を要する分野であり、同じく大学病院が中心となり、関連施設との強固な連携体制を構築していきたいと考えています。

基礎研究に関しては、これまで私は、マウスモデルを用いた前立腺がんにおける新規の治療標的分子やバイオマーカーの研究を行ってきました。一方、これまで福井大学では、様々な疾患モデルラットを用いた排尿機能の研究が行われてきました。近年は特に、糖尿病モデルラットに対し、様々な治療薬を用いることで、膀胱機能や血流の変化と同時に、膀胱や前立腺の組織学的変化を評価するという研究を行い、数多くの興味深い結果が得られています。今後は、私ががん研究の中で行ってきた遺伝子解析や蛋白解析の手法を、排尿研究に応用していきたいと思います。また逆に、排尿研究の中で行っているラットを用いた研究手法を、がん研究に取り入れていきたいと思います。そうすることで、今まであまりされてこなかった、「がん研究」と「排尿研究」を融合させた、新たな研究を進めていきたいと考えています。

コロナ禍は学生教育に多大なる影響を与え、特に、従来行ってきた形での臨床実習が困難となりました。そんな中、福井大学医学部では、オンラインを用いた授業や実習へとシフトしています。一方、臨床実習前後の客観的臨床実習試験の義務化に伴い、今後は、より実践的な医学教育が必要とされてきます。コロナ禍で培われたオンラインの技術を駆使することで、学生教育の効率を上げると共に、シミュレータを用いた実習を増やしていくことで、その状況に対応していきたいと思っています。特に、泌尿器科が得意とする腹腔鏡手術やロボット手術に関して、最新のシミュレータを用いた実習を積極的に行い、手術の面白さを伝えることで、外科系診療科に興味を持ってもらい、人材の確保に努めたいと考えています。

福井大学泌尿器科学教室は、決して大きな医局ではありません。その特性を生かし、一体感のある診療、研究、教育が可能であると考えています。医局員一人一人に目を配り、それぞれが楽しく快適に働けるような、魅力溢れる教室を作っていきたいと考えています。「才能は花開く時を待っている」とは、横山前教授が掲げられたモットーです。その考えを受け継ぎ、さらに「才能を花開かせる」ことが出来るような、活気に満ちた教室を作り、福井大学泌尿器科の発展のために全力を尽くします。